『國華』創刊120周年特別展

Taiketu


土曜日、仕事が2時に終わったので遅い昼食をとり、上野の博物館に向かいました。隅田川花火の行われる日なので、地下鉄には浴衣姿のお嬢さん方がたくさんいて、かわいいなぁと、こちらも何となく浮き浮きした気分になりました。

 今、東京国立博物館で行われているのは、『國華』創刊120周年を記念して行われている「対決―巨匠たちの日本美術」という展覧会です。岡倉天心らの力で創刊された『國華』という東洋美術雑誌は「雑誌」などと呼べないほど美しい本で、創刊の昔から印刷に工夫をし、その時代時代の最高の方法で日本の美術を紹介してきました。平成館入口近くに設けられた会場の説明パネルによれば、フランスの有名な美術誌が廃刊された後、数少ない長命の美術誌である、ということです。今回はその岡倉天心より繋がる一級の美術誌の展覧会ですから、なかなか見ごたえのあるものと期待して行きました。

 12組の作家の対決、というのは面白い企画で、単純にどちらが好きか、という見方で見ていても楽しくなります。
出ていた作品で比べて、という条件つきですが、私は快慶、雪舟、等伯、長次郎、宗達、仁清、円空、蕪村、芦雪、写楽、大観の勝ち。若冲と蕭白はほぼ引き分け(「唐獅子図」があるので少しだけ蕭白の勝ちか)という判定にしてみました。皆さんはいかがでしょうか?
展示替えがあるため、後期にも行きたい展覧会でした。とにかく、有名なものが出ていて、見比べられるというのは面白いと思います。

 一番インパクトのあったのは長沢芦雪の虎。和歌山の無量寺にあった襖絵です。この襖から飛び出て来そうな虎の裏には同じポーズで魚を狙う縞の子猫が描かれているそうで、作者のユーモアが感じられます。こちらの子猫も見てみたいものです。串本応挙芦雪館という所に行けば見られるのでしょうか。

 一番気に入ったのは仁清の「錆絵寒山拾得図茶碗」でした。人物の表情がかわいい上に器自体の柔らかい白さが美しいものでした。本当に仁清は器用な作家です。ついでながら、仁清と乾山のコーナーで香合の対決がありましたが、仁清の鶴の香合に合わせられていたのが槍梅の香合でした。でも、乾山らしさを言うなら以前、畠山美術館で見た槍梅の香合の方が乾山のダイナミックさがよく表れた作品で、鶴と勝負をさせてみたいものでした。

 蕪村の作品は絵もさることながら、字も美しく、そういえばどなたかが蕪村の字についての本を出されていたことを思い起こさせてくれました。「楊柳青青・一路寒山図屏風」というものは初めて見ましたが、おそらく図録の写真ではわからない魅力が、本物の前に立つと感じられるのではないかと思われる作品でした。

 若冲と蕭白のコーナーは色が氾濫しているようなところでした。でも、どこか楳図かずおの絵に似ていたり、モーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』を思い出すなど、現代性を持っているのかしらと思いました。

 自分の判定基準について考えてみると、もしかしたら作家の持っていた感動の心かもしれない、と思いました。知識や技ではなく、作家自身が自然の姿や自分の内面を見つめて感動している度合が大きいほど、こちらを揺さぶってくるような気がします。学生時代、文学の授業で書かされたレポートに、漱石と藤村を比べたものを提出したことがあるのですが、その時も同様に考えて漱石に軍配を挙げました。どのような面白いストーリーかということではなく、どれほど小説で扱っているテーマが作家自身の痛みなのか、ということが作品を確かにし、魅力あるものにしているのではないか、と考えました。

 とはいえ、一庶民の勝手な解釈です。巨匠たちは判定など、どこ吹く風。堂々と存在し続けるのです。私たちも大いに自己流判定をしてみても楽しいのではないでしょうか。


(写真は同展のちらしです。)

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