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    燕子花と橋のデザインされた光琳の作品 (東京国立博物館HP)

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さくら

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    いろいろなところで撮った桜の写真です。

青楓の小石川後楽園


  • 5月3日小石川の後楽園の庭を歩きました。

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梅と桜

DSC00143-1sakura 「奈良時代、花といえば梅であったが、遣唐使が廃止された頃から日本人は桜を愛するようになった」ときいたことがあります。梅と桜、あなたはどちらがより好きでしょう?

 もともと日本には梅は自生しておらず、いわゆる白鳳時代、大陸から移植されたのだそうです。早春に高雅な香りと、凛とした姿で人々に春を告げてくれる梅には、日本人との出会いの当初から、あるイメージが付随していたようです。

 奈良時代の詩集『和漢朗詠集』には、当時の青年貴族たちが詠んだ漢語の詩と倭語のうたとが並べられていますが、その中に、中国・唐の宮廷で人気を博した白楽天の、梅を詠じた詩も紹介されています。
     白片落梅浮澗水
     黄梢新柳出城間牆  (和漢朗詠集 巻上春 梅) 
 唐から伝えられた漢詩に、奈良の人々はどんな印象を持ったのでしょう。その詩とともに伝えられた梅の花。人々は「これがあの詩に詠まれている白い花か・・・」と憧れの気持ちを抱いたのではないでしょうか。梅は最初から高貴な花でした。

 能の『東北』(古名:『軒端梅』)では、和歌の才能を発揮した和泉式部の霊が登場して梅の木陰で美しく舞い、「今は和歌の徳で歌舞の菩薩となった」と語るそうです。梅は詩歌にゆかりのある花とされているようですね。
 工芸品のデザインでも、梅の枝に短冊がついているものをよく見かけますが、このことも「梅にうた」を証明しているように思います。それに、梅の木の枝は低いので実際、短冊を結ぶのに適しています。

 「うた」と並んで、もうひとつの梅のイメージは「死と再生」です。菅原道真が大宰府に配流され亡くなった後、都では天災が続き、彼を落とし入れた貴族たちが落雷で死に、人々は道真の祟りだと怖れます。そうして、その恐るべき道真の魂を鎮めるため北野天満宮が造られます。
     東風吹かば思い起こせよ梅の花
     主なしとて春な忘れそ
 この有名な道真の詩に梅が登場し、さらに天神様のマークとして梅が人々の中に入っていき、梅はさらに意味を持つ花になっていきます。
 能「箙」では、源平の合戦で武勲を立てた梶原源太景季の霊が、摂津国生田の森の戦いで、箙に梅の枝を挿して戦ったときの様子を語ります。もちろん、能の世界では、死霊というものがたびたび登場するのですが、ここではやはり「死」を覚悟した戦いの中でも穢れたものを寄せ付けない「梅」の強さや美しさが能に活かされているように思われます。
 
 長い冬の寒さに終止符を打つように春一番に花をつける梅の姿や、辺りの邪気をはらって清浄にしてしまうような梅の香り、そして、枯れたように見える枝から、春、突然に伸びてくる青い槍のような新しい枝に、日本人は「死」をも突き抜ける「強さ」を感じ、「再生」することの不思議さをみていたように思われます。

 左の「美術に関する本」リストでご紹介している『日本のデザイン』という美術全集では第七巻で、『松竹梅』として、梅を取り上げています。また、『第六巻 伊勢物語・詩歌・能楽』には、今ご紹介した二つの能の話も、美しい衣装とともに載せられています。巻末の解説とは別に、日本人について考えるヒントが写真集のところどころにちりばめられているのも、この全集の魅力だと思います。

 さて、一方の桜は、日本人にとってより身近な花であったような感じがします。絵画や工芸品の世界を見て、さまざまな桜が描かれていることが、私がそう思う理由です。

 先日から東京国立博物館の二階の特別1室では「桜」をテーマにした展示が始まっていますが、上野の山より一足先にお花見を楽しんではいかがでしょう。
 植物としても桜は梅よりもたくさんの種類があるから、という理由もあるのかもしれませんが、ここでは実にいろいろな桜の姿が楽しめます。遠くから白く見える桜、近くで繊細な花芯をも丁寧に描いた桜、新葉とともに咲く桜、枝垂れて咲く桜、美しい緑の柳と取り合わせられた桜・・・。

 刀の鍔にデザインされた桜を見て「これは刀の持ち主が桜を望んだのだろうか、それとも職人が桜という題材を選んだのだろうか」とふと、思いました。いずれにしても男の人が桜を選んだのか、と思うと日本の男性もなかなかエレガントではないか、と少し嬉しくなりました。

 『日本のデザイン 第四巻 桜』には今回、東京国立博物館で展示してある渡辺始興筆の吉野山図屏風や桜蒔絵角盥、鍋島の皿などが載せられています。私も写真集と実物の両方をじっくりと楽しんでいます。南は沖縄から北は青森まで、桜は日本各地で人々に愛でられ、さまざまなものにデザインされてきました。梅のような「きまり」がない分、桜の意匠は自由でバラエティに富んでいるように思いますが、みなさんどう思われるでしょうか。桜は現代においてもどんどん新しいデザインとして現れます。何も背負っているもののない軽さが桜のよいところなのでしょう。日本人が手放しで好きだと言えた桜のイメージに、戦争が特攻のイメージを重ねてしまったことは残念です。

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