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広重というドキュメンタリー作家

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 ゴッホ展を見る時「やはり、浮世絵を見なくては」と思ったので、原宿の大田美術館に行って参りました。5月1日からは『歌川広重のすべて 第二部』が開催されていて、初期から晩年までの版画作品を見ることができました。

 実は、以前にも申し上げましたが、私は江戸時代の美術というものがどうも苦手で、豪華すぎたり、細かすぎたりの絵や工芸にうまくなじめないでいます。でも、浮世絵の中の風景画だけは別で、木版画を見ることは大好きです。

 浮世絵との出会いは学生時代。あるとき、祖母を椿山荘に送って行ったことがあったのですが、その折に美術品の展示室に入りました。(今もこのような展示室があるのでしょうか?)そこには元代の藍色の大皿やら、明代の陶器などとともに、浮世絵とそれを摺るための二十数枚の版木がありました。浮世絵について、何も知らなかった私は、一枚の浮世絵を刷るのにこんなにも多くの版木が必要なのか、と驚き、また、そのように版を重ねていくのに絵がずれないで美しく出来上がっているということにも感心してしまいました。

 木版独特のあたたかな味わいも好きですし、絵画とは違ったグラデーションも魅力ですが、なんといっても面白いのは構図。今回展示されている中で、『東都名所 高輪之名月』という絵がありますが、これを最初に見た時、私はBBCの自然科学のドキュメンタリー映像を思い浮かべてしまいました。満月の海岸で雁が飛んでいる絵なのですが、その視点はまるで雁の目から見ているかのような構図なのです。仲間の雁とともに列をなして飛んでいく鳥の視点からの絵になっているのです。

 有名な『東海道五十三次之内』というシリーズでは、「こゑをそろへてもつてゐると、五十三次をゐながらみるのだ、わざわざいくにやァおよばねへ」と宣伝文がついていた、ということですが、確かに広重の風景画は旅の疑似体験ができるようなすてきなものです。私は彼の風景画を見ながら、広重という人に映画を撮らせたらきっと素晴しい作品ができあがったのではないかな、と思いました。もちろん、この広重の風景画が出てきた背景には、もう一人の天才、葛飾北斎の存在もあったと思いますが、江戸時代にこうした絵が描かれたということをみると、その後、日本が三百年の鎖国にもかかわらず近代国家として欧米に伍していったことが、当然のようにも感じられます。ものの見方、捉え方の新しさが、すでに江戸時代に十分あり、伝統の絵画とは別の面白さを庶民が知っていた、ということは愉快なことです。

 先日行ったワタリウム美術館では、岡倉天心の手紙や草稿が展示してありましたが、そのひとつに、天心が「浮世絵」というものの定義をしているメモもありました。そこには、やはり、単なる風俗画にはあらず、ということが記されており、天心もまた浮世絵の価値を評価していたように感じました。

 ゴッホは広重らの風景画が近景と遠景とをうまく組み合わせていることに興味を示し、「名所江戸百景』の『亀戸梅屋舗』の模写などを残していますが、この近景と遠景とで構成される理由について、写真の本『歌川広重 版画の世界とその画業』(平成17年5月1日 大田記念美術館 編集・発行 今回の展覧会の図録です。)の中で興味ある見解が紹介されています。ここでは詳しく申し上げませんが、そのことを知って、私はより広重という人物がドキュメンタリー作家としての資質にめぐまれた、素晴しい人だったのだと思いました。それは、何より、同時代を生きる人々との一体感や、自分の住まう「くに」(国家ではなく)に対する親愛の情を持っていたということなのだと考えます。

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