最近のトラックバック

美術に関する本

作品が掲載されているHPへ

  • 八橋蒔絵硯箱
    燕子花と橋のデザインされた光琳の作品 (東京国立博物館HP)

裏磐梯 五色沼周辺 1


  • 猫魔から五色沼入口へ向かう散策路を歩きました

さくら

  • Dsc00334_edited
    いろいろなところで撮った桜の写真です。

青楓の小石川後楽園


  • 5月3日小石川の後楽園の庭を歩きました。

« 大の男のお茶遊び | トップページ | 続 褪せない色糸 »

褪せない色糸

sinsilkroad1sinsilkroad2

 3日で終わってしまう『新シルクロード展』に行ってきました。もっと早く行こうと思いながら、ついここまできてしまいました。平日にもかかわらず、けっこう混んでいました。もう会期がないせいでしょうか?

 今日、印象に残ったのは墓の遺体の胸の上に置かれていたという小さな布。「巻草文刺繍帛」という名前がつけられていました。チェーンステッチで蔓性の草が刺繍してある紅い布ですが、周囲を緑色の絹で縁どってあり、その縁の布が紐のように延ばしてありました。説明では、弔いのために慌てて作られ、雑な仕立てになったのだろうか、とありましたが、確かにその形は正しい四角になっていなくて、死者とこの小さな布を縫った人はどんな関係だったのかしら、妻だったのか、母だったのか、それとも娘だったのか……、気が動転していて、それでも葬送の準備をしなくてはならないと、現実に立ち向かっていたのだろうか、などと思いました。
 傍にあったミイラの胸の上にも「冥衣」という小さな衣服の上下ひと揃い(上着14cm、ズボン11cm)が置いてありました。紅い小さな布も何か衣服のアイテムのひとつだったのでしょうか? 

 しかし、チェーンステッチは非常に細かく、説明文では、何かを転用したものだろう、と推測していました。文様そのものはまだ整理されていなくて、ぎくしゃくしながら草の蔓を描いていましたが、それでもこの蔓の文様が私達の良く知る唐草紋になっていくのだろうと、思われました。この布が見つかったのは、かの楼蘭の西北西200m、孔雀河の北岸に広がるインパン(営盤)墓地。時代は漢から晋(2~5世紀)ということです。
 長く蔓を伸ばしていく植物の生命力は人々の憧れであり、強さのシンボル、おめでたい文様だったのでしょう。シルクロードではさまざまに変化しつつ広く行き渡った文様です。わが国の仏像や仏具に施された宝相華や、獅子舞の獅子がかぶる緑に白抜きの唐草模様になっていく原型を見たような気がしました。

 シルクロードのもうひとつのおめでたい柄、葡萄文の展示品もありました。これもまた、刺繍の布で、丸い円が5~6個ずつ組み合わさり、葡萄を表していると思われる模様がびっしりと縫いつけられ、その中には鳥も描かれていました。こちらは北涼(5世紀)頃のものとされており、トルファン市 アスターナ177号墓から出土した、とありました。
 説明文には、はっきりと葡萄文だとは言えないが、西方で豊穣を表す葡萄と中国の漢族たちが瑞文とする鳥の出会いだと考えると面白い、と書いてありました。シルクロードはいろいろな文様が出会い、新しいものを生み出してきた道でもあるのでしょう。

 chawan

わが国の宝物の中にもこの唐草と葡萄をあわせたものは多く、今でも着物や帯の柄になり、茶碗の絵になり、カーテンの柄にもなっています。中央アジアでは主食が干し葡萄というところさえあると聞いたことがありますが、それに比べれば、できないことはないものの日本では葡萄を食べてきた、とは言えません。それなのに、シルクロードの記憶があって、日本でも文様としてはとてもよく見るものなのですから、本当におもしろいことだと思います。
 私はシルクロードの本を読み始めた頃からこの葡萄文が大好きになり、つい茶碗や皿に葡萄がついていると目がいってしまいます。今日は博物館の売店で吐魯番(トルファン)の干し葡萄というものを売っていたので、思わずお土産に買ってしまいました。

 それにしても、紅い小さな布も葡萄文様の端切れも、とても美しい色が残っていました。砂漠地帯の乾燥がその色を残した、とも言えるのでしょうが、その染色の技術も素晴しいものがあったのだと思われます。わが国の刺繍の古いものでは中宮寺が持つ天寿国繍帳の断片がありますが、これも、奈良時代の布や糸の色はきれいに残り、鎌倉時代に補修したところの色は褪せてしまっていると聞きます。手間を惜しまず天然のもので染めて作った古代の人々の偉大さに現代人は恐れ入るばかりです。彼らには私達とは違う時間の流れがあったのでしょうね。


(写真は「新シルクロード展」図録の表紙と裏表紙。同展は7月3日まで江戸東京博物館、8月13日~10月10日は兵庫県県立美術館、10月21日~12月18日は岡山デジタルミュージアムで開催されるそうです。)

« 大の男のお茶遊び | トップページ | 続 褪せない色糸 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/88028/4779017

この記事へのトラックバック一覧です: 褪せない色糸:

« 大の男のお茶遊び | トップページ | 続 褪せない色糸 »

日本の美術・アジアの美術2

夏の会津

  • 15  喜多方の観光馬車
    会津若松で白虎隊の墓所、御薬園、鶴ヶ城をまわりました。