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浮世絵の原点、観楓図屏風

takao

 先日、北斎展を見に行った折、常設展示にも足を運びました。本館2階の国宝室にあったのは、東京国立博物館の2005年カレンダーで9月・10月を飾っていた狩野秀頼筆、国宝「観楓図屏風」(室町時代)でした。

 カレンダーになっていたのは屏風の右隻、輪になって談笑している女性たちの部分でしたが、実物は左の方にも鼓を持つ男性や僧、橋の上で笛を吹く人物などが描かれていますし、画面の上の方には神護寺のお堂や、もう雪をかぶった愛宕の山も見えています。でも、この大きな屏風の中で、作者が一番描きたかったのはやはり、カレンダーで選ばれている部分だったろう、と想像されます。なぜなら、女性たちは美しく、とても楽しそうだからです。

 昔、英語のレッスンで「紅葉狩り」を英語で説明するという部分がありましたが、それによると、「お花見」がお酒とご馳走で騒ぐのに対し、「紅葉狩り」は静かに紅葉を楽しむ、という説明がされていました。確かにこの観楓図でも、ご馳走らしきものは簡単なものだけ。輪の中の白い小袖の女性は杯を持っていますが、他の者はどうもお茶を飲んでいるようで、どうやら中心は飲食ではなく、おしゃべりです。右から三人目の女性は乳飲み子に乳をやっていて、胸をはだけながらも楽しそうに話を聞いている様子です。

 筆者は秋の一日を屈託無く笑いあってすごしているこの女性たちを美しいと思ったにちがいありません。はしゃぐ子供たちや、少し肌寒くなってきた中、うまそうに茶をすする男にも、筆者の暖かいまなざしが感じられる絵です。画面全体の中で人物たちはまだ小さい扱いですが、筆者の人々を見る目は、後世の浮世絵に見られる視線と同じように思います。

 広重の東海道五十三次でも、北斎漫画でも、私達は江戸時代の庶民の姿を見ることができます。生き生きとした彼らの姿は筆者たちの気持ちを今に伝えているように思います。舟を操る船頭には、仕事に取り組む時の快い緊張感や、働き手として自分が主人公になれる時間を持てた時に誰でもが感じる幸せ感が表現されているし、欄干にもたれて月を見ている女には忙しい毎日の中で、ポンとあいた時間に月を眺めて浮世の憂さをほんの一瞬、忘れていられる幸福感を見て取れます。

 新潮社の『美術館へ行こう 浮世絵に遊ぶ』(安村敏信 著)という本の中では、浮世絵の源流の一つとして、中世の肉筆風俗画があげられ、その代表としてこの「観楓図屏風」の写真が載っています。つまり、この国宝室の屏風は現在開催されている北斎展へつながるものとして、関連ある展示品だったのです。紅葉の季節だからこの屏風が出ているものかと思っていた私は、迂闊にも、博物館の学芸員さんの意図に気付かずにいました。

 北斎展のお帰りには、本館の国宝室で、この赤と緑の鮮やかな屏風をご覧下さい。

(写真は東京国立博物館の2005年カレンダー、9・10月の一部分です)

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コメント

東博の常設展は、丹念にみていくと、いくら時間があっても足りない感じですね。いついっても、心が安らぎ、素敵な美術品を見ることができます。
久し振りに行きたくなりました。

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