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使わなくなっていく道具たち

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 高輪台の畠山記念館に行きました。今年のカレンダーがほしくて行ったのですが、もうありませんでした。畠山記念館は株式会社荏原製作所の創業者、畠山即翁のコレクションを納めた美術館です。

 今日は列品解説もあったので、ゆっくりと説明を受けて、すばらしい茶道具を堪能してきました。展示は、昭和26年1月に高松宮宣仁親王を迎え、殿下より「翠庵」の号を賜った茶室の披露と、即翁70歳の古稀を自ら祝う茶会を催した際の道具が出されていました。また、炭道具のいろいろも出ていました。

 展示は、煙草盆、炭道具、懐石道具、濃茶道具、薄茶道具と茶事の流れの別にまとまって並べてあるので、順に見ていくと自分もお招きを受けたような気分になれました。また、この美術館は軸物が畳のある陳列ケースに飾られているので、和室で床の間を拝見している視点からお軸を見ることができます。

 近代数寄者の代表、益田鈍翁との出会いから即翁の茶人としての人生が始まり、大正末から晩年にいたる約40年のうちに、自会記200余回、他会記300回に及ぶ茶会の記録を残したという即翁。会を催す時は自ら米まで研いだという心入れで、献立や器選びをけっして人任せにしなかったというエピソードを読むと、ここに並ぶ道具たちが美しいのもうなづけます。美術館としても、そんな即翁の遺志をついで、お茶の心を大切にした展示がなされているようです。

 ひとつ、「あこだ形菊蒔絵手焙り」というちいさなうるし塗りの手焙りが出ていました。火屋の部分が透かし細工になっていて、菊の意匠が凝っています。本体の蒔絵も金の研ぎ出しや梨地の他に赤茶の漆も使って、品の良い、華やかなデザインです。かつてはこのようなかわいらしいものに灰と炭を入れて使ったのです。今の私達にはもう、そのような習慣がなくなってしまったことが、とても残念に思えました。

 炭道具にしても、そうです。私は炉縁という道具が好きです。広間に華やかな蒔絵の炉縁がある様子も好きですし、小間の茶室に桑や沢栗などの木地のものが使ってあるのもすてきです。しかし、お茶の炭手前の時のように、皆が炉の周りに集まって赤い火を見つめる幸福感は、もう普段の生活の中では味わえません。かつては家々の囲炉裏の周辺にはそうしたものがあったのでしょうが、今ではキャンプのときか、キャンドルの火を楽しむ程度で、白い灰のなかで黒い炭が赤く燃えていくのを一緒に見ることはありません。

 お茶の炭手前のとき、濡れ灰という少し湿った灰を撒くと、水蒸気の力で空気に流れが作られ炉の中に酸素が取り込まれ、よく火がおこるそうです。理に適った作業ですが、同時にとても美しいものでもあります。茶人たちが夏の間に番茶をかけて作った灰は熱くなった白い灰の上に落ちて、渋い景色を作るのです。おそらく先人たちは、普段目にしていた暮らしの中の美しいと思う場面を、茶事へと取り入れていったのですね。

 煙草盆というものも、普段の生活の中では、もう消えてしまった道具でしょう。私もひとつだけ火入れを持っていますが、これを使うことはありません。お稽古として細い箸で富士山のように灰を整えたりしましたが、普段の生活でこれを必要とすることはありません。私たちには、ファンヒーターがあり、エアコンがあり、ライターがあり、もう炭は使っていないのです。
 
 こうした炭に関係する道具はこれからどうなっていくのでしょう。お茶の世界だけでは形を残していくのでしょうか? 今日の展示では、火入れは桃山時代の「志野焼擂座なで四方火入」と「織部撮み出し火入」というものが出ていました。どちらも味のある焼物です。茶碗とはまたちがった魅力があるだけに、このようなものを、どこかで使えないかしら、と思いました。
 
 この展示会では他にも、本阿弥光悦作の赤楽茶碗、銘「雪峯」、千利休所持の熊川茶碗、銘「若草」、小堀遠州と松平不昧の箱書きのある「古銅象耳花入」、「利休好み船形銚子」、尾形乾山作「結鉾香合」、鈴木其一筆、「曲水宴図」など、見ごたえのあるものがありました。

 帰りにはカレンダーのかわりに、『畠山即翁の茶事風流 懐石と懐石道具』(淡交社)という本と、ざっくりした箆削りが魅力の乾山の梅模様の「結鉾香合」が載っている『原三渓翁旧蔵の茶道具』(畠山記念館)という冊子を買いました。懐石の本は、今日見た道具が実際の料理に使われている様子などが撮影されており、普段の食卓の参考にもなるような楽しい本です。これを見ても、やはりお茶の道具は使ってこそ、と思います。


写真は『畠山即翁の茶事風流 懐石と懐石道具』(淡交社)の表紙と展覧会パンフレット

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