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日本仏教の母なる天台宗の宝

Saichou

 桜が満開になった上野に、「最澄と天台の国宝」展を見に行きました。天台宗開宗1200年記念の大イベントです。

 天台宗の祖、伝教大師最澄は同時代の弘法大師空海とよく対比して語られることが多い方です。宗教上のことは私にはわかりませんが、当時の貴族や天皇との関係づくりなどの手腕をみると、空海のほうが上手だったと言えるようです。しかしながら、宗教上でも目指したものが得られぬままに入寂した最澄の後には、次々とすばらしい後継者が現れ、天台宗は日本仏教の母山として、その存在感を誇っている、と言われます。

 鮮やかに仏の宇宙を創りあげ、人々を魅了した空海に対し、最澄は不完全さゆえに、その間隙を埋めるための努力が比叡山で営々と続けられ、多くの偉大な宗教者が輩出したのかもしれません。最澄が中国、五台山から持ち帰った日本仏教の種は後に法然の浄土宗、栄西の臨済宗、道元の曹洞宗、親鸞の浄土真宗、日蓮の日蓮宗をはじめとして、さまざまな形の仏教へと発展していきました。

 この展覧会もまた、そうした天台宗の1200年の歩みを集めたものだけに、さまざまな信仰のかたちを、私たちに見せてくれています。ここでは、たくさんの宝物のなかで、心に残ったものをご紹介いたします。

 ひとつめは、国宝の「一字蓮台法華経」です。福島の龍興寺というところに伝わるこの平安時代のお経は、一文字一文字が仏さまのお座りになる蓮台に乗っているのです。蓮の色は赤や青、緑で描かれており、非常に細い筆書きがなされています。一字が一仏として捉えられており、どれだけの時間を費やしてこのような経典が作られたのだろうか、と感じました。しかし、信仰という点からみれば、これを作っている間、作者は幸せな時間を過ごしていたかもしれません。信仰のない者にとってはつらい仕事も、宗教を持つ人にとっては、仏に奉仕することが悦びなのではないでしょうか。そうした人にとっては、人生の時間もまた、私のような形ばかりの宗教しか経験のない者とは、違っているのかもしれない、と思いました。

 ふたつめは、京都三千院の「阿弥陀聖衆来迎図」です。このコーナーにはいくつかの来迎図があり、それぞれに美しく、優しい天女のような菩薩がお迎えに来てくださる様子が描いてありましたが、この三千院のものが菩薩のお顔が優しくて、色もきれいに残っていたので、惹かれました。死というものは恐ろしいものですが、このような来迎図を信じられる力があれば、さほど恐ろしくはなくなるような気もしました。死と向き合わねばならなくなったら、このような美しいものを見て、その恐ろしさを緩和してみるのもいいかもしれないと思いました。この仏画を塗り絵のようにして写し、自分で色をつけてみるなどというのも、心を落ち着けるのに役に立ちそうです。

 実は、この1月、姑が亡くなりました。一緒に美術館に行ったり、お茶会に行ったりした母でした。このブログを始めたのも、母と唐三彩を観たのがきっかけでした。最期は病院の個室でしたが、治療の障りになる花は持っていけず、建物の裏に面した窓は暗く、もちろん絵などもありませんでした。医療という点からはその機能が果たされているのですが、平安の貴族たちのように、美しい来迎図をかけて、西の極楽浄土を念じて死を待つという死に方が、羨ましいとも思えました。

 この母が一体の仏像をおまつりしていたのですが、その後ろに、岩手の中尊寺にある華鬘を写した切り紙を飾っていました。今回、その本物である「金銅迦陵頻伽文華鬘(こんどう かりょうびんがもん けまん)」が出ていて、その前で私は母とともにこれが見られたらよかったのにと、残念に思いました。華鬘というのは、本来は生花を鬘編みにしたものだそうです。タイに行った折、そうしたものを売っているのを見かけましたが、昔の日本でも、そのようなもので仏前を飾ったのでしょうか。
 迦陵頻伽は上半身が人間で腰から下が鳥のかたちをしている、仏教の世界の生き物です。この「金銅迦陵頻伽文華鬘」の迦陵頻伽はふくよかな童子形の顔に、美しく広げた羽をもって、ふわりと向かい合っています。仏教王国、奥州藤原の金色堂の須弥壇(しゅみだん)を何百年も飾っていたその華鬘は今でも光輝く金色で、こうしたものに比べると、人の命はなんと短いものかと感じました。

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コメント

実に豊かな日本とアジアの文化と美術のブログですねえ

TB及びコメント有難うございました。
中々含蓄のある美術評で楽しませて頂きました。
私の場合は、学生の頃、京都・奈良を歴史散歩で随分歩きましたが、その後は、帰国の度毎に訪れる程度で、欧米が主。
とにかく、あっちこっちに首を突っ込み過ぎて、その後、この面では勉強不足を痛感していますので、学ばせて頂きます。

●コメント、ありがとうございます。
もったいないお言葉です。
今回暗い話題になってしまったので、
TBしたことを、少し後悔しておりました。
これからも、読ませていただきます。

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日本の美術・アジアの美術2

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