元時代の魚の面構え
先週のことになりましたが、父と母と三人で出光美術館に行きました。開催中の名品展には、日本、中国の各時代の絵画や書跡、中国、朝鮮の陶磁器や工芸品、茶道具が出品されていました。国宝の「伴大納言絵巻」、重要文化財の「絵因果経」、牧谿、毛倫、玉澗らの水墨画、無準師範、虚堂智愚、宗峰妙超や夢窓疎石といった禅僧たちの書、唐物の茶入に大井戸茶碗と、まさに名品揃いでした。
本当にいろいろなものが出品されていたので、どの作品についてお話すればよいのか、迷ってしまいましたが、とても力強い元時代の大皿がありましたので、そのお話をさせていただきます。
「青花魚藻文皿」という名のつけられたその大皿は美しいコバルト色で、真ん中に魚が一匹描いてありました。魚は水の中の藻に囲まれており、線で区切られた外側には宝相華なのか、牡丹唐草なのか、唐草文が描かれています。図録の解説によればこうした元青花は当初その多くがイスラーム圏に輸出されたのだそうで、イスラームの食習慣に沿う大皿となっているそうです。とすると、この皿には羊がのせられたのでしょうか。
真ん中の魚の面構えがなかなか良く、ギロリとこちらを向いていて、とてもおもしろい文様です。元時代の景徳鎮で焼かれた陶磁器は、後の時代の明のものと比べると青の色が濃く、文様もダイナミックなものが多いようです。明代のもののような細やかさより、私は元代のどっしりした感じが好きですが、あまり展示会などでお目にかかることは多くありません。
さて、魚の文様ですが、これは意外に古くからあり、今につながっているようです。私の持っているいくつかの図録の中から探してみると、紀元前4500~4000年頃のイラクのウバイド朝に始まって、紀元前1300年頃のシリアの双魚文の皿、唐時代の双魚文の金杯、15世紀朝鮮時代の瓶(へい)や扁壺、17世紀明時代の呉須染付、17、18世紀日本の有田で焼かれた「荒磯文鉢」まで、各時代にいろいろな場所で、魚の文様が描かれました。写真は見つからなかったのですが、安南(今のベトナムあたり)の双魚文の皿も有名で、記憶に違いがなければ、五島美術館でそうした展覧会を見たような気がします。
「青花魚藻文皿」の真ん中でギロリとにらんでいる魚は桂魚という高級魚だそうで、やはりお皿にはごちそうがのっていてほしいという願いで描かれたのか、とも思ってしまいます。ご紹介した魚文の皿が、相互につながりのあるものかないものかはわかりませんが、このように並べてみると、何か面白味を感じるのは私だけでしょうか?
ドイツのワールドカップに350キロもある大きなこいのぼりを持っていったというニュースを見ましたが、魚には、奔放な自由さが象徴され、見るものを大きな気分にしてくれるような気がします。選手達の活躍を祈りましょう。
| 固定リンク











コメント
こんにちは、初めまして。
この展覧会に行きましたが
焼き物については全くの素人ゆえ
見方もわからずながめてくる程度の鑑賞でした。
こちらのブログで勉強させてもらってから
観に行ったらよかったです。。。
TB送らせていただきました。
投稿: Tak | 2006/06/11 14:32
●Takさん、こんにちは。
勉強なんて、ムズカシイものではないですが、昔からの
図録からあっちこっち引っ張り出しました。文様が東西交渉の中で変わっていったり、あるいは、変わらなかったりというのがおもしろいんです。
投稿: 郁 | 2006/06/11 16:44