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受胎告知と普賢菩薩―西と東の宗教画

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 春分の日、上野の国立博物館にレオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」を見に行きました。博物館に着いたのは10時前だったと思いますが、本館の前と東洋館の前に整然と列を作り、順番に入場するようになっていました。待ち時間は20分ほど。と言っても、展示してある部屋に入ってから、ベストポジションで見られるように列に並び、ゆっくりと進んだので、絵の正面に至るまでにはさらに時間がかかりました。

 絵は思った以上に鮮やかで、美しい色のものでした。小学生か中学生の頃買ってもらった百科事典に、美術と音楽の別冊がついていたのですが、その2冊は私の大のお気に入りでした。確かこの「受胎告知」もその本で見たのが最初だったと思うのですが、その頃から、いつかこの絵の本物を見てみたいと思っていたのが、今回実現して喜んでいます。イタリアでは国の宝を貸し出すことに対して、異論を唱える人も少なからずいた中で、今回の展覧会が行われているそうで、本当にありがたいことだと感謝しています。

 解説によればこの絵はレオナルド・ダ・ヴィンチが20歳のころ、「親方」として始めて描いたものと考えられているそうです。そう聞いたせいか、何かまだこなれていないような印象を受けました。非常に意欲的で、さまざまなことに挑戦している感じですし、細かいところもとても丁寧です。この時代の流行も取り入れ、自らの探究心も込め、この絵は成立しているということでした。

 絵はマリア様の青い衣装と天使ガブリエルの赤い衣、そして二人の間にある白い机、奥に光るやや青っぽくみえる白く輝く景色、暗い足元に咲く植物というものが心に残りました。

 さて、「日本の美術・アジアの美術」と銘打って、ここで終わるわけにはいきません。イタリアの絵画だけを見てはこのブログに取り上げることができませんので、私は本館の仏画を見にまいりました。今は鎌倉時代の曼荼羅と普賢菩薩像、阿弥陀如来像などが展示してありました。西と東の宗教画を比べてみるのもおもしろいのでは、と考えたからです。

 いくつかある中で、普賢菩薩像に注目しました。白い6本の牙を持つ象に乗った菩薩の図像です。普賢菩薩像というと、国宝室に出される平安時代のものが有名ですが、この御像は今年は7月に展示されることになっているそうで、今回見たものは鎌倉時代のものです。私の頭の中では平安時代のものも含めて、先ほど見たレオナルド・ダ・ヴィンチの絵と比べていました。「受胎告知」の制作は1472年から1475年頃と考えられおり、日本で言えば応仁の乱(1467―1477)の頃ということになりますから、普賢菩薩像の方が古い時代に描かれた絵ということになります。

 鎌倉時代の普賢菩薩像は退色してはいますが、残っている色から考えると当初は白い象、菩薩の赤い衣、緑の蓮華座、そして透き通るような菩薩の身体が鮮やかな絵だったと思われます。この世のものではない輝きを持つ菩薩に対し、我々人間に少し近い存在である脇侍が意外にリアリティのある表情で左に立っていました。周囲の暗い画面の中には壷に入った植物のようなものも見えます。

 このように見てみると、東西の宗教画には共通点のあることに気付きます。赤と白という色、透き通る肌を持つ人物(マリア・天使・菩薩)、暗い中の植物(今日見た鎌倉時代のものにはありません。平安時代の普賢菩薩像には散華が描かれています)、翼を持つ人と6本の牙の象という異形のものの存在、また、透き通る肌を持つ人はこの世ならぬ雰囲気を持っていながら、それでいて非常に細部まで表現された衣装を身に着けています。そして、指先の表現。「受胎告知」のマリアも天使ガブリエルも、鎌倉時代の普賢菩薩もとても美しい指先をしています。マリアの右手はダ・ヴィンチの若さゆえか、少しわざとらしい表現になっているような気もしましたが、暗示的な天使の指とともに、見る者の注目するところであり、魅力を感じるところなのではないでしょうか。

 洋の東西を問わず、偶像を認める宗教には人を魅了する色や形が盛り込まれている、ということなのかしら、と思いました。もちろん、宗教画にもさまざまなものがあり、たとえばダ・ヴィンチと同時代の日本やアジアを考えると全く違う僧侶の頂相のようなものがあったり、墨で描かれた観音像や禅画のようなものがあったりしますから、今回のような比較は偶然できたものなのかもしれません。それでも、少なくとも私には、ダ・ヴィンチの絵も平安や鎌倉の普賢菩薩像も同じような高揚感を与えてくれるように思います。

 上野の桜は数本を除いてはまだ蕾でした。でも、今日明日の暖かさでどんどん開花しそうです。ダ・ヴィンチの展覧会の列があまり長くならないうちに、お出かけになってはいかがでしょう。


(写真は「レオナルド・ダ・ヴィンチ  天才の実像」展のパンフレットです。展示は第1会場の「受胎告知」のほか、彼の残した手稿をもとにパネルや模型、ビデオなどでその興味の内容がわかる第2会場・平成館の展示もあります。) 

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コメント

こんばんは。
TBありがとうございます。

「受胎告知」印刷物では得られない
色合いを見せてくれていました。

西洋絵画は「修復」という名目で
上塗りされることもしばしば。
この作品は確か数年前に修復されたばかりです。

人を魅了するものとは宗教を超えるのでしょうか。
ちょっと話しがそれてしまいますが、
江戸絵画に魅了されたプライスさんとか。
「受胎告知」、オーラがまばゆかったです。

●Takさん
修復の方針は国によって、違うようですね。
日本は現状保存が原則のようですが、海外の名品は
ときどき、やけにきれいなものがあり、考え方の違いを感じることがあります。

●tsukinohaさん
異なる文化の中で育った人間が同じ作品に魅力を感じるというのは、何か、愉快なものを感じます。人類はアフリカに起源をもったひとつの遺伝子でつながっているということを聞いたことがありますが、お互いの芸術を理解し合えるというのは、そのことの証明のような気がします。

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