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美女と美しい仏像

Yakusiji2

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 上野で薬師寺の仏像とウルビーノのヴィーナスを拝観してきました。連休初日とはいえ、時間が良かったのか、さほどの混雑はなく両方の展覧会を楽しむことができました。ウルビーノのヴィーナスはルネサンス期、ティツィアーノの描いた美女の裸体画でイタリアの名宝。モデルは当時の高級娼婦だとも言われているそうですが、とろけるような肌の美しさが魅力的な絵です。展示室の照明などの影響もあるかと思いますが、実物を拝見するとポスターよりも落ち着いた色調に見え、やはり芸術品はコピーでなく実物を見ないとわからないものなのだな、と思いました。

 先に見たのは薬師寺展で、ヴィーナスを見ながら薬師寺の日光・月光菩薩や聖観音像を思い出しつつ、時代も地域も全く異なるところで生まれた美術品を頭の中で比べていました。薬師寺の仏像も肌の美しさではひけを取らず、はちきれるような瑞々しい生命を感じさせてくれます。こちらも写真で見るほど黒い色には見えず、金堂から出ていらっしゃると印象が変わります。


Urbino


Yakusiji3

 薬師寺の仏像は、男性像とも女性像とも言えません。今回は寺院に置かれている時と違って後ろからも御像を見ることができますが、たとえば聖観音は有馬皇子の姿を写したものという伝承もあるように、正面から見ると青年のように見えますが、すこし斜め前から見上げれば柔和な女性の顔をしていらっしゃるようにも見え、横からでは厳しさを持つ男性の顔、また後ろに回れば滑らかではあっても肩のあたりは逞しく、細い腰は女性のようにも見えるという複雑な形態をもっています。この世ならぬものを表す仏像ですから、男性でも女性でもないのかもしれません。

 考えてみると、仏像はインドではまったく男性像であったのが、中国に入って変化したようです。如来は男性と思われる姿なのですが、如来の左右に立たれる菩薩は女性のような姿に作られることが起きてきます。もともとインドでも菩薩は貴族の青年のような装束で造られ、青年特有のやわらかさや清真さが表現されていることが多いのですが、中国ではまた一歩進んで宮廷の女性と見紛うような美しさで表現されることも増えていきます。敦煌の唐代の窟には色の白い、赤い唇の華奢な身体を持つ菩薩がかわいらしく小首をかしげて立っています。

 薬師寺の日光・月光菩薩像も少し身体を捻っているところは、唐代の菩薩に似ているのですが、それほど女性的というものではないようです。しかし、近づいて見るとその表面の滑らかさが美しく、衣のひだや瓔珞(首飾りや胸飾りなど)の彫りがとてもきれいに仕上げられていて、おそらく当時はこの仏像を見せることが国の高い技術力を示すことにもなったのではないか、と思われました。そうした国の威信をかけた推進力もある一方では、やはり仏像という礼拝の対象に向かう奉仕の精神がこれほどの美しい鋳造品をつくったのか、とも考えました。もちろん、造立されて千数百年の間も常に磨き続けられていたのですから、当初から今のようであったとは断言できませんが、あの薬師寺の中尊の台座を考えただけでも、おそらく当初からかなりのレベルに磨かれてあったのではないでしょうか。

 今回の展示では、日光・月光菩薩は少し高い位置からも拝観できるように工夫されていますが、この視点から見ると両像が思ったよりずっと大きいものであったことを思い知らされます。今回は中尊なしでのお出ましですが、三尊が揃って眼の前に現われた時の当時の人々の喜びはいかほどだったろう、と思いました。健康的で、明るい印象の御像は、昭和の成長期、修学旅行で見た時と変わっていませんが、現在のような世の中の雰囲気の中で見るとかつては当然のように見えた明るさが、ずいぶん眩しく見えるような気がしました。


(写真は薬師寺展のちらしと図録表紙、ウルビーノのヴィーナス展のチケット)

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コメント

ご無沙汰いたしております。
当方もウルビーのビーナスと薬師寺展、
セット?で行ってまいりました。
あわただしいなかでの、拝観だったのですが、
両方ともとりあえず行けたのは幸いでした。
聖観音のお姿をいろいろな角度からご覧になっての感想は、郁さんならではの観察だなあと思いました。

●祁瑛堡通信さん、こんばんは。
日記、読ませていただいております。
実は、私もファンでして、
高句麗、百済、新羅、契丹、靺鞨なんて聞くと、
それだけでわくわくしてしまいます。

日光・月光が揺れていたなんて、
おそろしいことです。
地震国日本なのですから、
対策よろしくお願いいたします、と申し上げたいです。

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