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桃山の大柄の小袖

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 新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で、丸紅コレクション展を見て来ました。お昼休みの短い時間に見学したので、ゆっくり味わうわけにはいきませんでしたが、丸紅の前身が呉服商であったために集めたという小袖や着物の図案、またその後集められた洋画のコレクションをながめて参りました。

 展覧会のちらしには日本で唯一のボッチチェリの作品という「美しきシモネッタ」という絵画が大きく取り上げられていました。23歳という若さで亡くなったというモデルの女性は歴史の教科書に出てきた探検家のアメリゴ・ヴェスプチのいとこの妻であったということでした。髪を複雑に結い、カールさせ、長く垂らした色白の女性は少し遠くを見ているような表情で、その横顔は何か自分の意見を言い出しそうな感じがしました。赤い唇で彼女は何を言ったのでしょうか?

 しかし、このブログは東洋美術について書いておりますので、展覧会入口にあった小袖のことを考えることにします。

 展示されていたのは桃山時代の辻が花染めの小裂(こぎれ)とその復元をした「鳥取に柳文様小袖」です。小裂はすでに色褪せて薄茶色の濃淡のような状態でしたが、復元された小袖の方は赤と白と緑色の鮮やかなものでした。小袖の半身ずつ文様と色が替えられていて、とても派手な印象です。文様も大きく幾何学的な花や葉が表現してあり、ポップな感じです。

 少し小袖の歴史を調べてみましたら、古代から続いていた紋織りや唐織の技法が応仁の乱など、中世にかけての混乱期に失われてしまい、その代わりにおそらく庶民の間から絞り染めの応用である辻が花染めが出てきたのが、室町時代。桃山にかけては大柄で奔放なイメージのものが好まれて片身替わりや段染めのような華やかなものが作られたそうです。しかし、慶長の頃になるとしだいに小さな文様のものが増え、唐織に似せた刺繍をほどこしたものが出てくるそうです。

 障壁画なども、桃山のものというととてもダイナミックで大きな意匠のものがありますが、小袖のデザインも大柄のものが好まれたようです。能や狂言の衣裳を見ていても、遠目にも華やかなものが多くて、舞台を見ごたえあるものにしてくれますが、これはやはり時代の好みだったのでしょうか。

 大正時代の着物の柄も大柄で、色鮮やかなものが多いという印象がありますが、そうした流行のデザインの似通った時代は、なにか共通点があったのでしょうか? 大正時代も桃山時代も政治の変革を経て、まだこれからどのようになるかはわからないけれども、何か自由な空気が流れていた時代だったのかとも思います。

 振り返って現代のファッションを見ると、柄物はあまり見られず、無地の洋服を着る人が多くなりました。着物の世界でさえ、スーツ感覚で着られるグレーの御召しや無地の紬が人気のような気がします。桃山や大正とはまったく逆の時代感覚なのかもしれません。しかし、平安時代の源氏物語絵巻を見ても、鎌倉時代の神護寺の源頼朝像の黒い装束を見ても、無地と見えて近づいてよく見ればその生地には美しい紋織りがありました。もちろん現代にもそうした生地は見られますが、どんどんそうした細やかな技術の使われているものが少なくなっているようにも感じられます。平板で、シンプルなものが主流となる時代なのでしょうか? それが時代の好みであればまだよいのですが、もしコストばかりでそのようなものが主流となっているなら、少し淋しい気がします。

 若い女性たちが華やかなプリント柄の洋服を着たり、男性たちのスーツがシックな織物になったりしていることは、日々の暮らしを楽しくしているように思います。長い染物や織物の伝統を活かして、暮らしの中に美しいものをちりばめておける、そんな日本であってほしいと思います。

 復元された桃山時代の大柄な小袖を見ながら、今の時代の気分とはどんなものなのだろうかと、考えました。


追記: この記事を書いた後で、テレビでこの小袖が淀君のものであったと考えられていることを知りました。慌てて見学して、説明書きを見落としたのかもしれません。淀君のものだとすると、現代のセレブ達のファッションと比較しなくてはならないのかもしれませんね。

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