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心を贈る印可状―妙心寺展

Myosinji


 美術展や博物展はその企画によって、少しずつ訪れる人の層が異なるように思います。今回の東京国立博物館平成館での妙心寺の特別展は、20代の男性がいつもより多いような気がしました。もちろん、曜日や時間などにも左右されましょうから、確かなことでもなく、私個人の印象なのですが、ポスターの虎と豹の金屏風のイメージが勇壮で華やかな雰囲気を醸し出して、若い男性を惹きつけるのかとも考えます。

 ポスターとなった狩野山楽筆の「龍虎図屏風」が展示されているのは会場の最後の方で、前半の展示は臨済宗の高僧たちにまつわるものが中心です。頂相(肖像画)や偈、法語の軸、妙心寺ゆかりの皇族がたの消息や綸旨、あるいは寺の文書などがありました。それぞれのお坊様のお顔を拝見しながら、その方の書かれた文字を見ていると、少しその人となりを想像することができそうな気になります。

 開山の関山慧玄(かんざんえげん)の肖像画を見ると、真面目そうで、厳しそうではあるけれど、大きな優しさを持っているように感じました。生前は肖像を描かせなかったため、慧玄が示寂して後、70年も経ってから描かれたという絵が、どのくらい本当の慧玄に似ているのかはわかりませんが、語り伝えられたその人物像を形にすると、このような堂々としたお姿になったのでしょう。

 今回の特別展はこの関山慧玄の650年遠諱を記念しての展示会ということで、およそ10万坪という京都の禅宗の大寺院・妙心寺の宝物が拝見できます。美しいビーズ細工の「瑠璃天蓋」、「山水楼閣人物図螺鈿引戸」、狩野元信の「瀟湘八景図」、そして、狩野山楽の「龍虎図屏風」。また後期では「瓢鯰図」や伝馬麟筆の「普賢菩薩像」も展示されるそうで、前期にも増して、楽しみです。

 ところで、開山の慧玄という方は禅に対してとても厳しい姿勢で臨み、生涯で唯一、授翁宗弼にのみ印可状を渡したということです。遺墨もこの印可状のほかにはなく、まさに「不立文字」と言われる心と心の受け渡しであり、文字にも言葉にも頼らぬ継承だったことが窺われます。

 たまたま土曜日の昼間、ニュースの続きでテレビを見ていて、漫才師の登場する法律相談番組をやっていたのを聞いていたのですが、現在でも贈与というものは贈る側の「気持ち」があるかないかで決められる、という話をしていました。上司が高級フランス料理屋に連れていくと約束したが、誓約書には有名なシェフの店でごちそうする、とあった。ところが有名なそのシェフはラーメン屋に転向し、上司はみんなにラーメンをおごった。この場合、みんなは誓約書をタテに高級フランス料理をご馳走してもらえるか、というちょっとふざけた話でした。弁護士さんの答えは、上司にその気がなければ無理じいはできない、というものでした。弁護士さんはもうひとつ例を出して、バーの女の子に店を持たせてやる、と約束し、一筆も取られていた男性の裁判で、約束の文書があるにせよ、それを強制する理由はなく、これも男性側にその気持ちがなければ約束は実行されなくてもよい、ということが認められた、ということでした。

 とても卑近な例を挙げてしまいましたが、現代においても実は文字や言葉などより心が重視されているではないか、と思いました。禅宗での「不立文字」での継承と現代の法律のなかでの贈与の考えに共通するのは心、というもの。どんなに約束をしても、覚え書きを作っても、言葉などとは軽いものなのかもしれません。心が失せれば何の意味もなく、少しの力も持ちません。

 仏教では妄語という考えがあり、こんなブログを書いている私はこの妄語の煩悩にどっぷりと浸かっているのでしょう。展示品の中の仮名書きの法語に、(悟りということを、だったと思いますが)「生きながら死ぬること」と書いてあったことが、心にとまりました。

 それでも展示場の最後にあった大きな松の絵のようなものを見ると、言葉にはできない温かさを感じて、美しいものが人を慰めてくれるありがたさを思いました。


(写真は同展のちらしです。)

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