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異形のものを創り出す力

Ashur2


 興福寺創建1300年記念の「国宝 阿修羅展」に行きました。強い雨の日でしたが、やはり人気の阿修羅が出ているとあって、平成館は込み合っていました。

 今回の展示法は薬師寺の日光・月光菩薩と同様、少し高い所から眺めた後、御像の足元に行って拝見できるというものでした。多くの人が集まっているにもかかわらず、静かな雰囲気の中でみんなが阿修羅を取り巻いていました。それでいて、その場にいる人たちの気持ちの高揚が何となく感じられて、美術の力とは強いもので、しかも、みんなが共有できるものなのかもしれない、と思いました。

 照明もとても気遣いが感じられ、まぶしくもなく、また暗すぎもせずちょうど良い具合でした。3つのお顔をぐるりと回って拝見し、傍に寄って裙の美しい文様を眺めました。中学生くらいの少年とも少女とも見えるその表情に惹きつけられます。今回、ふと、この像が文通をしていた友人に似ていることに気づきました。

 弟夫婦と一緒に行ったのですが、弟は「本当にこんなのがいたら、気持ち悪いな」と率直な感想を述べていました。それは周囲を回って見るうち、なんだか御像が動いているように感じられたからかもしれません。止まって見ている分には阿修羅は不思議に気味の悪さはありません。三面六臂の異形にもかかわらず、人に見えるのです。正面から見ると両脇の2つの面があまり見えない位置にあるので、そのように感じるのだと図録の解説にはありました。

 先日、阿修羅展がもうすぐ始まる、という時に東洋館をのぞきましたら、インドの細密画が出ていて、そこには鬼の姿のアスラがありました。そのように阿修羅を捉えることもできるのに、この像の作者はなぜ若い人の姿にしたのでしょう。他の八部衆にしても十大弟子にしても、全身を眺めている時にはあまり感じられないリアリティが、近くに寄ってその表情を真近に見ると豊かに表現されていることに気づきます。それは造像の技術の未熟さなのかもしれませんが、美しいプロポーションの唐代の仏像にもないような、内面の表現が像の表情に見て取れることも事実です。それは技術の問題以上に作者の関心の持ちようがそこにあったのではないでしょうか。

 鬼の姿に描かれるアスラを青春の苦悩と戦う若い人に表現した、ということは、作者にとって、宗教が表面的なものではなく、「鬼になる」ということはどういうことなのかを真に考えぬいていたからではないでしょうか。

 そのような眼でこれらの群像を見ていると、作り手の観察した少年や少女、あるいは青年、老人の苦しみや悲しみや意欲や怒り、諦念など、いろいろな感情が見えてきます。千数百年の昔の作り手が見ていたものが何であったかが、現代の私たちにも伝わります。異形のものを創り出す力は人間に対する観察眼であったか、と思いました。

 また、別の異形のもののすばらしい表現だ、と思ったのは、鎌倉時代の四天王に踏みつけられている餓鬼たちです。奈良時代の仏像は大抵足元の表現が不安定で、リアリティに欠けますが、鎌倉の四天王たちの足はむんずと餓鬼を踏みつけて、その力を見せつけています。餓鬼たちはそれは気の毒な様子ですが、そのやられっぷりが、漫画かコントでも見ているように、とても上手いのです。おそらくは現実に身分が上の者が下の者をこのように踏みつけにする光景もあったのかしら、とも思えます。これも人の筋肉や体の動きをよく観察したことで、ウマくやられる様子の餓鬼ができあがったのでしょう。

 この世にないものを生み出すのはこの世の中の細やかな観察。そんなことを考えた阿修羅展でした。

Ashur1_2

(写真は同展のちらしと図録。図録は各御像のアップの写真があり、満足しています。表紙が白いので光って写ってしまいました。)

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